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特集 難聴の治療――再生医療から人工聴覚器まで
遺伝性難聴に対するiPS細胞創薬
-――ペンドレッド症候群に対する低用量シロリムス療法
Drug discovery and development for sensorineural hearing loss using patient derived-iPS cells
藤岡 正人
1
,
細谷 誠
1
,
小川 郁
1
Masato FUJIOKA
1
,
Makoto HOSOYA
1
,
Kaoru OGAWA
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
キーワード:
内耳性難聴
,
iPS細胞(人工多能性幹細胞)創薬
Keyword:
内耳性難聴
,
iPS細胞(人工多能性幹細胞)創薬
pp.695-701
発行日 2021年2月13日
Published Date 2021/2/13
DOI https://doi.org/10.32118/ayu27607695
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感音難聴の多くは内耳性である.内耳は解剖学的・組織学的理由から生検が困難であるため,細胞レベルでの治療標的の同定が難しい.抗体医薬を含めた分子標的薬が全盛期を迎えている今日において,細胞レベルでの病態機序が明確でないことは創薬の視点からは大きな開発リスクであり,事実,難聴に対する新薬は長年誕生していない.一方で,遺伝性難聴の場合は遺伝学的検査により変異を同定することで,すくなくとも遺伝子レベルでの原因はつきとめられるため,近年,遺伝子治療を中心に脚光を浴びている.ただし,齧歯類と霊長類に種差を認めることもあり,病態の検討には慎重な判断を要する.筆者らの研究チームでは,種差の問題に対峙するためのひとつの選択肢として,霊長類モデル研究を推進してきており,ヒト疾患細胞を直接in vitroで再現できるiPS細胞(人工多能性幹細胞)創薬研究のアプローチを内耳性難聴に適用してきた.本稿では,遺伝性疾患であるペンドレッド(Pendred)症候群/DFNB4の内耳障害に対するiPS細胞創薬の経緯と現況について述べる.
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