特集 薬物乱用・依存・中毒の現状~「危険ドラッグ」を中心に~
4.救急現場における危険ドラッグ中毒の実態
上條吉人
1
1埼玉医科大学病院救急科(ER・中毒センター)・教授
pp.657-659
発行日 2016年2月1日
Published Date 2016/2/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201602657
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危険ドラッグ摂取後に救急搬送される患者は,2011年の終わり頃より急増し,その後は一定の水準を維持していたが,2014年の終わり頃からは激減した。初診時の症状としては,多くの患者に交感神経興奮症状,意識障害,中枢神経興奮症状が見られた。また,横紋筋融解症,肝傷害,急性腎障害,身体外傷などの身体合併症を認めた患者も多く,長期入院の要因となっていた。また,2013年以降は死亡患者も散見されるようになった。 危険ドラッグには合成カンナビノイドなどのさまざまな合成薬物が添加されているが,ほとんどの救急施設では薬毒物分析により合成薬物を同定することは不可能であるので,救急医療現場では“正体不明の敵と戦う”対症療法とならざるを得ない。