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2011年度以降,危険ドラッグが関与したと考えられる健康被害や自動車事故等の他害事件の報告が増加している.厚生労働省は,流通と規制の「いたちごっこ」的状況を打破すべく,2012年度および2013年度に2種類の構造を対象として薬事法(現「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」略称:医薬品医療機器等法.2014年11月25日の薬事法等の一部を改正する法律施行により薬事法が改称)下で初めて包括指定を導入した.また,麻薬取締官および麻薬取締員に薬事法上の指定薬物に対する取締権限の付与等を内容とする法改正(2013年10月1日施行),指定薬物の単純所持・使用等を罰則付きで禁止すること等を内容とする法改正(2014年4月1日に施行)を実施した.さらに,2014年7月には,6月末に起きた池袋の自動車暴走事件に関係したとみられる2物質について,指定薬物制度が誕生して初めて「指定手続きの特例」として定められている緊急指定を行った.その後も12月末までに5回にわたり,指定薬物のスピード指定を行った.その結果,2015年1月5日時点で指定薬物総数は1437物質となった.一方,2014年8月末より断続的に,薬事法に基づき,指定薬物の販売の可能性がある店舗に対し検査命令を実施し,検査結果が出るまで該当商品の販売を禁止する措置をとっている.さらに,危険ドラッグ濫用の状況に鑑み,2014年11月25日に薬事法から改称施行となった医薬品医療機器等法の一部を改正し(12月17日改正法施行),「指定薬物,指定薬物である疑いがある物品」だけではなく,「指定薬物と同等以上に精神毒性を有する蓋然性が高い物である疑いがある物品」についても検査命令および販売等停止命令を行うことを可能とした.また,これら物品について,広域禁止物品として告示し,生産および流通を広域的に規制する措置をとることを可能とした.このように,危険ドラッグをめぐる状況は刻々と変わっている.本稿では,国立医薬品食品衛生研究所(国立衛研)が実施している危険ドラッグ流通実態調査の結果を元に,指定薬物制度による規制と危険ドラッグ流通実態の変化について解説する.
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