特集 薬物乱用・依存・中毒の現状~「危険ドラッグ」を中心に~
3.精神科病院における薬物乱用・依存の実態
松本俊彦
1
1国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部・部長
pp.649-654
発行日 2016年2月1日
Published Date 2016/2/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201602649
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本稿では,「全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査」の結果を元に,わが国の薬物乱用・依存の現状を概観した。その結果,近年,精神科医療の現場では,危険ドラッグや睡眠薬・抗不安薬といった,「取り締まれない薬物」,「捕まらない薬物」が問題であることが明らかになった。また,危険ドラッグが依存性・精神病惹起危険性において覚せい剤に勝るとも劣らないこと,ならびに,睡眠薬・抗不安薬の乱用・依存が一種の医原病としての側面があることも示された。 以上の結果を踏まえ,筆者は,これまでともすれば供給断絶に偏りすぎていたわが国の薬物対策であるが,今後は,需要低減にも力を入れていく必要があることを指摘した。