特集 C型肝炎治療における新時代の幕開け
4.直接作用型抗ウイルス薬(DAA)併用療法の幕開け~アスナプレビル・ダクラタスビル併用療法~
鈴木文孝
1
1虎の門病院肝臓センター・部長
pp.81-86
発行日 2016年1月1日
Published Date 2016/1/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201601081
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C型肝炎ウイルスに対する治療薬は,近年飛躍的に進歩してきている。特にウイルス蛋白を直接標的に開発されたdirect-acting antiviral agents(DAAs)の登場により,C型肝炎の治療は高い効果とともに,副作用が少ない治療へと進歩してきている。これらのDAAs製剤は,単剤では十分な効果が得られなかったが,違う作用機序のDAAs製剤を併用することにより,インターフェロンの効果が低いgenotype 1型や前治療無効例に対しても高い効果が認められている。プロテアーゼ阻害剤(アスナプレビル)とNS5A阻害剤(ダクラタスビル)併用療法24週間投与の国内第III相試験では,genotype 1型高ウイルス量症例に対して81~ 91%のウイルス持続性陰性化率(SVR率)であった。さらに治療開始時NS5A領域のL31またはY93のアミノ酸変異,あるいはNS3領域のD168のアミノ酸変異がない症例では94~ 100%のSVR率であった。製造販売承認後でも同等の成績を認めている。一方,全体的に有害事象の発現率は低く,忍容性は良好であった。しかしAST・ALT(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ・アラニンアミノトランスフェラーゼ)値の上昇,発熱,皮疹などには注意が必要である。また肝硬変症例では,全身状態を考慮して,副作用には慎重に対処する必要がある。高齢化している日本のC型肝炎患者への治療は,その時にできる最善の治療を行っていくことが大切である。