第 II 部 注目の新薬
<多発性硬化症治療剤> 「イムセラ®カプセル 0.5mg/ジレニア®カプセル 0.5mg」
佐藤滋
1
,
藤原一男
2
1財団法人広南会広南病院神経内科
2東北大学大学院医学系研究科多発性硬化症治療学寄附講座・教授
pp.282-291
発行日 2013年1月31日
Published Date 2013/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201313282
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フィンゴリモド塩酸塩は,多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)の再発・進行を抑制する経口薬である。スフィンゴシン1-リン酸(S1P)受容体に結合して,機能的アンタゴニストとして働く。主たる作用はリンパ球を二次リンパ組織内に留めて,Th17陽性細胞など病原性のあるリンパ球が中枢神経内に浸潤するのを抑制するためと考えられている。再発予防や脳MRI(magnetic resonance imaging)の改善について,これまでわが国でMS治療薬として唯一承認されていたinterferon β(IFNβ)を上回る再発予防効果が期待でき,IFNβの副作用や中和抗体により治療継続が困難な症例にも投与できる。また,脳萎縮抑制作用の報告もあり,MSの予後が大きく改善する可能性が期待される。一方,徐脈,リンパ球減少,黄斑浮腫,肝機能障害といった副作用があり,導入時には注意深い観察を要し,長期安全性についても更なるデータの蓄積を要する。また,視神経脊髄炎(neuromyelitis optica:NMO),NMO spectrum disorder(NMOSD)に対しては重篤な再発を誘発する可能性が高く,使用すべきではない。