連載 リスクマネジメント~院内での薬剤師の活動~(86)
高カロリー輸液(TPN)調製用バッグ混注口からのインスリン追加混注の問題点 ~院内,そして企業に向けての情報発信~
深井康臣
1
,
矢嶋明
2
,
山内恵史
3
,
太田伸
4
1長野赤十字病院薬剤部 病棟業務係長 [東京薬科大学薬学部臨床薬剤学教室]
2長野赤十字病院薬剤部 副薬剤部長
3社会医療法人財団慈泉会 相澤病院 糖尿病センター・センター長
4東京薬科大学薬学部臨床薬剤学教室・教授
pp.2867-2879
発行日 2013年12月1日
Published Date 2013/12/1
DOI https://doi.org/10.20837/1201312143
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高カロリー輸液調製用バッグ(以下,TPN調製用バッグ)を用いての輸液調製では,一度調製が完了した後の追加混注オーダーがあった場合,追加薬液をTPN調製用バッグ混注口より再混注しなければならない。しかし,TPN調製用バッグ混注口は非常に細長く特殊な形状をしているため,インスリンなどの微量薬液を追加混注した場合では,薬液が混注口に停滞し,TPN調製用バッグ内部に拡散しないケースのあることが,我々の研究により判明した。 このことは,高カロリー輸液投与中の耐糖能異常患者に対し,指示量のインスリン投与ができず,血糖をコントロールできない可能性が懸念された。 インスリンは無色透明の薬液であるため,TPN調製用バッグ混注口からインスリンを混注した場合,バッグ内部に拡散したか否かを目視で判別することは不可能で ある。 つまり,【TPN調製用バッグ混注口からの混注完了】=【TPN調製用バッグ内部への拡散】ではないのである。 これを回避するメディカルリスクマネージメント(medical risk management:MRM)の手法として,TPN調製用バッグの混注口よりインスリンの注入後,別の注射器(2.5~5mL用)で生理食塩水等を2~3mL取り,この注射針をTPN調製用バッグ混注口に浅く差し込みフラッシュさせた後,手指によるTPN調製用バッグ混合が有効となる。 MRM の考え方は,医療の質を保証するために重要な意味を持つこととなる。