今月の主題 消化・吸収の基礎と臨床
治療
高カロリー輸液
岡田 正
1
1阪大第1外科
pp.674-676
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402207872
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はじめに
消化・吸収障害をきたす疾患として数多くのものが知られているが,いずれの場合においても,程度の差はあれ,何らかの栄養障害が存在し,しかも経口摂取による栄養改善はあまり期待し得ないことが多い.
一般に栄養障害が存在すると,身体を構成する各臓器においても,組織・細胞レベルでの栄養代謝の低下がみられ,ひいては胃腸管の病変自体の治癒機転が障害される.ところが,このような場合,栄養改善を期待して積極的に経口摂取を行ってみても,食餌が病巣を刺激し,さらに病態悪化をたどるというのがお決まりの経過であった.このような「食べるといっそう病状が悪くなる」消化器疾患特有のジレンマに対して大きな光明を与えつつあるのが高カロリー輸液法である.1967年米国,ペンシルバニアのDudrickら1)によって試みられ,その幅広い臨床効果が示された高カロリー輸液法は,静脈経路のみよりの栄養補給を可能とし,これのみで長期生存が可能であること,また積極的な栄養改善が可能であることを示したのである.当初は相次いであらわれた副作用のため,極めて危険視され,一般には容易に受け入れられなかった本輸液も,次第に副作用対策が確立され,システム化管理が行われるようになって,ますます各科領域において広く用いられるようになりつつある.高カロリー輸液の実施法に関しては,現在,数多くの教科書,文献に詳述されているので他誌に譲り,本稿では触れない.
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