特集 消化器がん薬物療法
第1部 各臓器がんにおける現在の標準治療と今後の展望 2章 胃癌 Ⅱ 切除不能胃癌に対する化学療法 1.現在の標準治療とそこに至るエビデンス
牧山 明資
1
1岐阜大学医学部附属病院がんセンター
キーワード:
化学療法
,
バイオマーカー
,
免疫療法
Keyword:
化学療法
,
バイオマーカー
,
免疫療法
pp.1042-1047
発行日 2024年8月9日
Published Date 2024/8/9
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000003146
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本邦において1990年代にさまざまな薬剤の治療開発が行われたが,フルオロウラシル(5-FU)持続静注療法を超えて生存期間の延長を示す治療はなく,これが第Ⅲ相試験の対照群となる標準治療として位置づけられた.2000年代にはJCOG9912試験およびSPIRITS試験の結果が相次いで発表された.JCOG9912試験は,対照群である5-FU持続静注療法に対する,イリノテカン+シスプラチン療法の優越性と,S-1単剤療法の非劣性を検証した第Ⅲ相試験である.主要評価項目である全生存期間(OS)において,5-FU持続静注療法に対しイリノテカン+シスプラチン療法は優越性を示すことができず〔ハザード比(HR)0.85,95%信頼区間(CI)0.70~1.04,p=0.0552〕,S-1単剤療法は非劣性を示すことが証明された(HR 0.83,95%CI 0.68~1.01,p=0.0005).経口投与の利便性も含めてS-1単剤療法は5-FU持続静注療法に代わりうる標準治療と考えられた.SPIRITS試験は,対照群であるS-1単剤療法に対するS-1+シスプラチン療法の優越性を検証した第Ⅲ相試験である.主要評価項目であるOSにおいて,S-1単剤療法に対しS-1+シスプラチン療法は優越性を示すことが報告された(HR 0.77,95%CI 0.61~0.98,p=0.04).これによりS-1+シスプラチン療法はS-1単剤療法に代わり新たな標準治療として確立した.
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