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黄疸とは,血液中のビリルビン濃度が上昇することで,皮膚や眼球結膜などに黄染をきたした状態と定義される.黄疸についてはすでにギリシャのヒポクラテスの時代から記録があり,季節性の春先に流行する疾患との記載もあることから,これについてはA型肝炎による黄疸をみていたのではないかと考えられている.またローマのガレノスは,ヒポクラテス医学をもとに当時の医学をまとめ,人間の体液は血液を基本に「血液,粘液,黄胆汁,黒胆汁」の四つから成り,その均衡の破綻によって病気になるとする四体液説を提唱した.すなわち古代から,胆汁のなんらかの代謝異常が人体に重大な影響を与えており,その表現型が黄疸であると考えられてきた.そして現在では黄疸が血液中のビリルビン濃度上昇によるものであることが明らかとなっている.黄疸は消化器内科医にとっては日常的に遭遇する症候であるが,その原因は多岐にわたる.一般に黄疸を診療する際には,直接ビリルビンと間接ビリルビンのどちらが優位なのか,肝細胞性黄疸なのかあるいは閉塞性黄疸なのかなど,大まかに分類しながら鑑別診断を絞り込んでいくと思われる.しかし実際には原因がはっきりしない症例や,溶血性貧血など消化器疾患以外の原因で黄疸を生じている症例もある.また胆道ドレナージをすべきなのか,なんらかの薬物治療をすべきなのかなど,治療介入の判断に迷う黄疸症例も経験する.しかし臨床経験を積んでいくうちに,むしろ黄疸という症候・病態について深く考察することが少なくなっている医師も多いのではないだろうか.そのようななか,本号では「黄疸を極める」というテーマで,ギリシャ時代から知られる症候である黄疸について,病態理解から鑑別診断,各種病態に対する治療法について,最新の知見を交えて再考する機会をいただいた.
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