特集 消化器領域における免疫チェックポイント阻害薬の現状・今後の展望
8 .がん免疫療法の課題と今後の展開(1)がん微小環境での免疫応答に着目した免疫療法
和田 啓孝
1
,
藤城 光弘
1
,
西川 博嘉
2,3
1名古屋大学大学院医学系研究科病態内科学講座消化器内科学
2名古屋大学大学院医学系研究科微生物・免疫学講座分子細胞免疫学
3国立がん研究センター研究所腫瘍免疫研究分野/先端医療開発センター免疫トランスレーショナルリサーチ(TR)分野
キーワード:
制御性T 細胞
,
CD25
,
FOXP3
,
腫瘍微小環境
Keyword:
制御性T 細胞
,
CD25
,
FOXP3
,
腫瘍微小環境
pp.519-524
発行日 2020年4月20日
Published Date 2020/4/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000001143
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
がん免疫療法,とりわけ免疫抑制に関わる免疫チェックポイント分子に対する阻害薬がさまざまながん種に臨床応用され,がん治療にパラダイムシフトをもたらした.長期的な治療効果が認められる患者が存在するものの,半数以上の患者では併用療法によっても抗腫瘍効果が認められず,新たな治療戦略が求められている.制御性T細胞(Treg)は,FOXP3(forkhead box protein P3)の発現を特徴とするCD4+T 細胞中の免疫抑制性のサブセットで,自己免疫寛容の維持に不可欠な役割を担っている.腫瘍免疫においては,Treg は抗腫瘍免疫応答を抑制し,発がん,腫瘍増殖を促進することから,Treg で特異的に発現している分子および抑制機能を標的とした治療開発が進んでいる.臨床応用されている免疫チェックポイント阻害薬でも,CTLA‒4(cytotoxic T lymphocyte antigen 4)阻害薬はTreg を除去し,免疫抑制を阻害する可能性が報告されている.一方で,PD‒1(programmed cell death 1)はTreg,とりわけがん局所に存在するTreg に発現しており,一部の患者ではPD‒1 阻害薬がTreg の免疫抑制機能を増強することが明らかになってきている.したがって,Treg を標的とした治療法の開発は喫緊の課題であり,本稿ではTreg 標的治療の現状と展望を述べる.
Copyright © 2020, Nihon Medical Centers, Inc. All rights reserved.