特集 SASP:古くて新しい細胞老化随伴分泌現象
SASPの生体内における役割 組織損傷修復とがん進展における微小環境に着目して
大谷 直子
1
1東京理科大学 理工学部応用生物科学科
キーワード:
Deoxycholic Acid
,
肝臓腫瘍
,
細胞外排出作用
,
腫瘍
,
創傷と損傷
,
肥満
,
細胞老化
,
伊東細胞
,
腫瘍微小環境
,
腸内細菌叢
,
代謝産物
Keyword:
Gastrointestinal Microbiome
,
Deoxycholic Acid
,
Exocytosis
,
Liver Neoplasms
,
Obesity
,
Neoplasms
,
Wounds and Injuries
,
Cellular Senescence
,
Hepatic Stellate Cells
,
Tumor Microenvironment
pp.1130-1134
発行日 2015年11月22日
Published Date 2015/11/22
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DNA損傷など,発がんの危険性のある変化が細胞に生じた際に発動される不可逆的細胞増殖停止機構である細胞老化が重要ながん抑制機構であることは間違いない.しかし最近,細胞老化を起こした老化細胞はすぐには死滅せず,長期間生存し続けて多彩な分泌因子を産生し( SASP現象),自己の細胞または周囲の細胞に様々な影響を及ぼすことが明らかになってきた. SASPは皮膚や肝臓の組織損傷の際に一時的に誘導され,それらの組織修復に貢献するという生理作用がある一方,がん進展や慢性炎症など,生体への様々な悪影響も示唆されている.がん細胞周囲の微小環境においては細胞老化を起こした細胞が,がんに促進的な因子を分泌し,がんを進展させることが筆者らの研究を含め多くの研究で明らかになってきている.このような SASPによる影響は,周囲の細胞が正常細胞なのか,前がん状態の細胞なのかというように細胞の性質によって大きく変わることが知られている.今後, SASP因子の産生をうまくコントロールすることが,がんや加齢性疾患の予防につながる可能性があると考えられる.
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