特集 腹膜炎・腹水に対する診療の進歩
2 .感染性腹膜炎・腹水の診療(5) 内視鏡診療に伴う腹膜炎
大木 亜津子
1
,
鶴見 賢直
1
,
橋本 佳和
1
,
長尾 玄
1
,
竹内 弘久
1
,
阿部 展次
1
1杏林大学医学部消化器・一般外科
キーワード:
内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)
,
穿孔
,
遅発性穿孔
,
内視鏡的乳頭切開術
Keyword:
内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)
,
穿孔
,
遅発性穿孔
,
内視鏡的乳頭切開術
pp.993-1001
発行日 2019年6月20日
Published Date 2019/6/20
DOI https://doi.org/10.19020/CG.0000000848
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内視鏡診療,とくに穿孔による腹膜炎の治療方針を中心に概説した.内視鏡診療に伴う穿孔で腹膜炎を併発したら基本的に手術を要すると考えてよいが,臓器の特徴に鑑みて治療方針をたてることが重要である.胃の内視鏡的切除後の穿孔は完全閉鎖の可否が術後管理に重要であるが,腹膜炎を併発しないかぎりほとんどの症例で保存的治療が奏功する.十二指腸内視鏡的切除後やERCP関連の穿孔では腹膜炎を併発しやすく,手術が後手後手に回ると患者の生命にも危険が及び,手術も複雑化する.大腸穿孔では上部消化管穿孔と異なり,腹腔内に流出する腸管内容物の細菌数は圧倒的に多く腹膜炎は重篤化しやすい.適切な術前腸管洗浄,穿孔直後からの抗菌薬投与開始,内視鏡的完全閉鎖が腹膜炎重篤化予防に寄与する.いずれの臓器においても,穿孔後に保存的治療を選択した場合においては,腹膜炎徴候を見逃さないよう,厳重な患者モニタリングが必要である.また,穿孔した臓器にかかわらず共通な事項として銘記すべきことは,穿孔直後の腹腔内と,保存的治療が奏効せず腹膜炎を併発した腹腔内の状況は大きく異なり,手術に踏み切るタイミングによって手術難易度や内容も大きく異なってくる可能性がある,ということである.
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