臨床研究
血液透析患者におけるクエン酸第二鉄水和物錠を1 年間継続投与した場合の有用性
志内 敏郎
1
,
村上 真也
1
,
川原 和彦
2
1川島病院薬剤部
2鴨島川島クリニック内科
キーワード:
クエン酸第二鉄水和物錠
,
鉄含有リン吸着薬
,
長期投与
,
血液透析
Keyword:
クエン酸第二鉄水和物錠
,
鉄含有リン吸着薬
,
長期投与
,
血液透析
pp.1165-1170
発行日 2018年8月10日
Published Date 2018/8/10
DOI https://doi.org/10.19020/CD.0000000647
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透析患者では,透析導入時に残存腎機能がある患者を除き,リン(phosphorus;P)の除去は透析療法と便への排泄となる.そのため,P に気をつけた食事療法や十分な透析療法を実践してもたびたび高P 血症となる.高P 血症自体が血管石灰化の誘因であったり,副甲状腺ホルモン(parathyroidhormone;PTH)を上昇させ,カルシウム(calcium;Ca)とともに異所性石灰化を引き起こし,生命予後を悪化させる.現在,高P 血症治療薬のP 吸着剤は,Ca 含有P 吸着剤とCa 非含有P 吸着剤に分けられることが多い.近年,Ca 非含有P 吸着剤である鉄含有P 吸着剤が市販された.鉄含有P 吸着剤のクエン酸第二鉄水和物錠(ferric citrate hydrate;FCH)は,P 吸着作用以外に薬剤の鉄が体内に吸収され血清フェリチン値(serum ferritin;ftn)が上昇することを臨床でよく経験する.この効果を逆手にとり,静注用鉄剤で危惧されたアナフィラキシーショックや体内の過剰鉄の問題などの副作用を,FCH 投与で回避する考えもできる.また,大部分の血液透析患者に投与されている赤血球造血刺激因子製剤(erythropoiesis stimulating agent;ESA) は, 鉄の存在が必要条件であり,ftn の上昇が,鉄代謝の改善につながり腎性貧血を改善する可能性もある.しかし,FCH を血液透析患者に対して1 年間継続投与し有効性と安全性を検討した報告はまだ少ない.
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