Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
わが国の麻酔医療において系統的シミュレーション教育が導入されてから30年以上が経過した。シミュレーション教育は,麻酔医療関連の医療安全推進や専門医育成を中心に重要な役割を果たしてきた。本論文では,麻酔医療におけるシミュレーション教育の現在の課題と今後の展望について述べる。シミュレーション教育は臨床教育との相互補完的関係にあるため,相互還元は必要不可欠である。麻酔医療におけるシミュレーション教育が今後も持続していくためには,“学会レベル” “教育者レベル” “学修者レベル” での継続的質改善が必要である。
シミュレーションは,一般的に “経験型学修原理を基盤とした実臨床以外の経験” と定義される1)2)。この観点から,麻酔医療の草創期とされる19世紀初頭の華岡青洲時代においても,机上演習もしくは事前準備の一部としてのシミュレーションは存在していたと考えられる。ゆえに,麻酔医療におけるシミュレーション教育の “起源” に関する明確な定義は難しい。
筆者は “系統的な学修システム” としてのシミュレーション教育のわが国への導入時期は,平成以降の一次救命処置(basic life support:BLS)や二次救命処置(advanced life support:ALS)講習会の導入であると考えている3)。理由としては,BLSやALSは単にシミュレータに対し蘇生アルゴリズムを訓練するだけでなく,教育工学に基づいた “評価法” および “教育法” に関して提示していたからである。その後も,救急や麻酔をはじめとするクリティカルケア領域,気道管理シミュレーション教育が米国から紹介された。21世紀に入り,わが国でも学術開発・実践団体として,Difficult Airway Management,超音波ガイド下中心静脈穿刺,鎮静安全管理などをベースに発展した日本医学シミュレーション学会(http://jams.kenkyuukai.jp/about/)が麻酔科医・集中治療医・救急医を中心に設立された4)。
さらに,シミュレーション教育法の普及により,周術期管理チームをはじめとした多職種連携や院内医療安全推進などの多様なシミュレーション教育の開発と実践例も見られる5)。麻酔医療におけるシミュレーション教育の貢献として “医療安全の改善” “侵襲的行為の教育活性化” “多職種協働の推進” など非常に大きい6)。本論文では麻酔医療におけるシミュレーションの課題と今後の展望について概説する。
It has been more than 30 years since systemic simulation-based education was introduced in Japan. Simulation-based education has contributed to patient and medical safety or specialist education in anesthesiology. In this review, the author discusses the hurdles and future direction of simulation-based education in anesthesiology and related areas. Because simulation-based education and clinical education are complementary to each other, mutual feedback and improvement are essential. For the development of simulation-based education in anesthesia-related field, continuous improvement is needed from academic society, educator, and learner viewpoints.
Copyright © 2023 KOKUSEIDO CO., LTD. All Rights Reserved.