投稿論文 短報
術中の近赤外線脳酸素モニターで広範な脳梗塞を予測しえなかった弓部大動脈置換術の1症例
松波 めぐみ
1
,
崎村 正太郎
,
藤本 侑里
,
牧 盾
,
瀬戸口 秀一
,
外 須美夫
1九州大学病院 麻酔科蘇生科
キーワード:
開頭術
,
酸素飽和度測定
,
術中モニタリング
,
大動脈瘤
,
動脈瘤-解離性
,
脳循環
,
脳梗塞
,
冠状動脈バイパス術
,
近赤外分光法
,
心筋虚血
,
大動脈置換術
,
遅延診断
,
胸部CT
Keyword:
Aortic Aneurysm
,
Coronary Artery Bypass
,
Myocardial Ischemia
,
Aortic Dissection
,
Monitoring, Intraoperative
,
Oximetry
,
Craniotomy
,
Cerebrovascular Circulation
,
Spectroscopy, Near-Infrared
,
Delayed Diagnosis
,
Brain Infarction
pp.169-172
発行日 2020年2月10日
Published Date 2020/2/10
DOI https://doi.org/10.18916/J01397.2020182767
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
65歳男。胸背部痛と左下肢の脱力感を主訴に救急搬送され、Stanford A型急性大動脈解離の診断で弓部大動脈置換術を施行した。術後1日目に鎮痛薬を中止したが覚醒不良で、2日目に頭部CTを施行したところ右中大脳動脈領域に広範なlow density areaと左への著明なmidline shiftを認めた。緊急開頭減圧術を施行し、その後の経過は良好であった。本例は術中に近赤外線脳酸素モニター(NIRS)を装着していたが、rSO2の大きな変動はみられなかった。術後2日目の頭部CTで右の前頭葉に一部脳梗塞を逃れた領域を認め、この領域は、右内頸動脈解離に伴う右中大脳動脈の低灌流により左前大脳動脈から前交通動脈を介して灌流された可能性がある。この脳特有の血流支配のために、NIRS装着部位直下の血流はある程度保たれていたことで、実際に脳梗塞を起こしていた部分の低灌流を正確にモニタリングできていなかったものと考えられた。
Copyright© 2020 KOKUSEIDO CO., LTD. All Rights Reserved.