投稿論文 症例
進行乳癌治療後の腋窩部皮膚欠損に対する遊離皮弁を用いた緩和再建の1例
森下 有紀
1
,
門田 英輝
,
宮下 佳代
,
福嶋 晴太
,
稲富 裕佑
,
花田 麻須大
,
吉田 聖
,
増田 隆明
1九州大学病院 形成外科
キーワード:
腋窩
,
形成外科
,
リンパ行性転移
,
洗浄療法
,
デブリードマン
,
X線CT
,
乳房腫瘍
,
致死的転帰
,
遊離皮弁
Keyword:
Axilla
,
Fatal Outcome
,
Therapeutic Irrigation
,
Lymphatic Metastasis
,
Tomography, X-Ray Computed
,
Debridement
,
Breast Neoplasms
,
Plastic Surgery Procedures
,
Free Tissue Flaps
pp.861-866
発行日 2021年7月10日
Published Date 2021/7/10
DOI https://doi.org/10.18916/J00398.2021304982
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症例は51歳女性で、左乳癌に対し左乳房全摘術および化学療法が施行されており、初回手術から2年後、左腋窩部リンパ節転移、肺、骨転移を指摘された。化学療法等により腋窩リンパ節転移、肺転移は完全寛解が得られたが、腋窩動脈の露出を伴う左腋窩部の皮膚欠損が残存した。化学療法終了直後、腋窩動脈からの出血が生じ、腋窩動脈結紮術が施行された。以後、同部皮膚欠損部位に創感染を来たし、洗浄、デブリードマン、抗菌薬等の治療が行われた。4ヵ月間の連日の創処置により創はやや縮小するも皮膚欠損が残存したため、創閉鎖目的に当科転科となった。初診時には、創内に汚染、悪臭を認め、多剤耐性緑膿菌とCoagulase-negative Staphylococcusが検出された。当科転科翌日、全身麻酔下にデブリードマンを施行した。術翌日より創内持続陰圧洗浄療法を4日間施行、その後はV.A.C Ultaを用いたベラフロ治療を9日間施行した。創部の感染は徐々に落ち着き、術後14日に皮弁を用いた創閉鎖を予定した。腋窩創部はきれいな肉芽組織で覆われており、表層のデブリードマンのみ施行した。内胸動静脈を露出して血管吻合を予定したが、内胸静脈が非常に細く吻合に適さないと思われたため、頸横動脈と外頸静脈を移植床血管とした。術後は問題なく経過し、皮弁閉鎖後17日に疼痛は軽減し、麻薬が不要となった。皮弁閉鎖術後10ヵ月、病状の進行による悪液質のため現病死となったが、最期まで腋窩部周囲の出血、感染、疼痛はコントロールされており、処置は不要であった。
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