投稿論文 症例
特発性後天性血液凝固第13因子欠乏症により止血困難であった左背部皮下血腫の1例
胡内 佑規
1
,
田中 寧子
,
尾崎 裕次郎
,
白澤 保子
,
畔 熱行
,
鈴木 健司
,
覚道 奈津子
,
楠本 健司
1医誠会病院 形成・美容外科
キーワード:
血液凝固第XIII因子
,
血液凝固第XIII因子欠乏症
,
血腫
,
輸血
,
胸部CT
Keyword:
Factor XIII
,
Factor XIII Deficiency
,
Hematoma
,
Blood Transfusion
pp.855-860
発行日 2021年7月10日
Published Date 2021/7/10
DOI https://doi.org/10.18916/J00398.2021304981
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症例は72歳男性で、起床時に左背部の皮下腫瘤を突然自覚し、当院救急外来を受診した。胸部造影CTで、左側前鋸筋下に血腫様の高吸収域を認めた。筋層下に造影剤の血管外漏出を認めたため、筋層下の血腫と診断し、血腫除去術を予定した。前鋸筋下に大量の凝血塊(108g)を認め、一塊にして除去した。術後2日に左背部に再度腫脹を認めた。術後筋層下に挿入したドレーンからの出血は少量であったが、ヘモグロビン(Hb)値の低下を呈し、同日より術後6日まで連日照射赤血球濃厚液2~4単位を輸血した。造影CTでは、前回に血腫を認めた筋層下には血液の貯留は認めなかったが、その皮下に血腫の貯留を認めた。通常の術後再出血とは経過が異なるため凝固因子異常を疑い、血液凝固第13因子(F13)活性3%以下と著しい低下を認めたためF13製剤(フィブロガミンP)を補充した。フィブロガミンにより出血傾向は改善したと判断し投与後2日に全身麻酔下で、隆起した腫瘤の直上を切開して、皮下の血腫を除去した。その後、Hb値の減少・左背部の腫脹の再発は認めなかった。術後19日にF13インヒビター検査陽性と判明した。特発性後天性F13欠乏症と診断し、その後血液内科にて治療継続となった。術後55日のCT所見では、左背部胸壁血腫はほぼ消失し、術後90日、瘢痕を残すが腫脹はなくなり、創部経過良好となっている。
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