鼠径ヘルニア囊への腹膜播種から生じたと考えられた卵巣明細胞癌の腹壁内再発の1例

悪性腫瘍の術後再発部位として，腹壁内は極めてまれと考えられる。症例は44歳1妊0産，卵巣明細胞癌ⅠC3期に対する初回治療終了後10カ月に，左鼠径部近傍の下腹部腹壁内に25mm大の腫瘤が出現し，卵巣癌再発と診断して腫瘤摘出術を施行した。術中所見からは鼠径ヘルニア囊内への腹膜播種結節である可能性が高いと考えられた。術後追加治療なしとしたが，再発のため2年10カ月後に死亡した。本症例のような腹壁内再発に対する手術は，術後腹壁ヘルニアや筋，帯，神経などの損傷に留意し，他科と合同で行うことが望ましい。