特集 フローチャートでわかる 婦人科外来診療パーフェクトブック
Ⅳ 生殖・内分泌
40.高プロラクチン血症
佐伯 信一朗
1
,
柴原 浩章
1
,
塩谷 雅英
1
S. Saeki
1
,
H. Shibahara
1
,
M. Siotani
1
1英ウィメンズクリニック
pp.1361-1369
発行日 2024年11月1日
Published Date 2024/11/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000003176
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プロラクチン(prolactin;PRL)は主に下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞で産生される。他に子宮筋層,黄体期後期の子宮内膜や妊娠中の脱落膜からも産生される。プロラクチンは乳腺の発達,乳汁分泌,黄体機能の調節,精子形成,性行動への関与,体液浸透圧の調整,免疫機能の調節など多彩な生理作用を有するホルモンであり,産生・分泌は主に視床下部からのドパミンで制御されている。プロラクチンの異常産生を引き起こす原因としては,腫瘍性が最も多く,次に視床下部-下垂体ドパミン作動性経路の薬理学的または病理学的な遮断によるものである。これらは,ときに同一病態性である(図1)1)。病因にかかわらず,女性では性欲減退および不妊症,月経不順または無月経,一方男性では勃起不全および性腺刺激ホルモン分泌低下症などの症状をきたす。高プロラクチン血症を介した性ステロイド作用の減弱は,性機能の低下のみならず骨量減少を惹起する。高プロラクチン血症の女性では脊椎骨密度が約25%減少し,プロラクチンレベルが正常化しても必ずしも骨密度は回復しないことが報告されている2)。高プロラクチン血症患者1,607人の解析では,計算上の平均有病率は男性で10万人あたり約10人,女性で10万人あたり約30人と女性の平均有病率は男性の3倍である。また,25~34歳の女性の有病率がピークとされている3)。
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