症例
高齢者の外陰癌治療後に生じた皮膚・粘膜障害に対し紫雲膏が奏効した1例
松岡 竜也
1
,
岡村 麻子
2,3,4
,
小島 彩友美
1
,
遠藤 誠一
1
,
島袋 剛二
1
T. MATSUOKA
1
,
A. OKAMURA
2,3,4
,
S. OJIMA
1
,
S. ENDO
1
,
K. SHIMABUKURO
1
1土浦協同病院産婦人科
2かしわの葉レディースクリニック
3つくばセントラル病院産婦人科
4東邦大学薬学部
pp.537-549
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002560
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外陰癌の基本治療は手術療法であるが,腫瘍径が大きいと切除後の皮膚欠損が広範囲に及ぶ。過去,当科では広汎外陰切除術と同時に皮弁形成術を行った複数症例を経験したが,臀溝皮弁のような有茎皮弁を用いても皮膚離開や壊死などが生じた。放射線療法が施行されることもあり,しばしば皮膚・粘膜炎が生じる。高齢者に多い外陰癌の治療において,局所の皮膚・粘膜障害による疼痛・不快感は歩行・排泄などに悪影響を与え,抑うつ気分・せん妄などの原因にもなりうると考えられるから,そのケアは非常に重要である。西洋薬は褥瘡の治療に準じた外用薬が選択されるが,種類が多く運用が頻雑である。今回,漢方治療として皮膚のみならず粘膜にも使用しやすい紫雲膏を応用できるのではないかと考えた。手術療法に放射線療法が重なり,繰り返し生じた皮膚・粘膜障害に対し奏効し,かつ副作用は認めなかった。また,偶発的に生じた褥瘡に対しても短期間で奏効した。紫雲膏の効能・効果は多岐にわたり期待でき,漢方医学的な異病同治の概念が十分に活用できた。
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