特集 子宮収縮抑制薬の長期投与はやめられるのか?―切迫早産管理のエビデンスと実践―
10.切迫早産の病態仮説と管理方法の実際
-―当院が行ってきた管理方法とその効果①―
仲村 将光
1
M. Nakamura
1
1聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院産婦人科
pp.735-741
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/sp.0000002204
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周産期において最も管理が困難な合併症の1つである切迫早産は近年,管理が変わりつつある。妊娠中の子宮収縮という現象は生理的にも発生し,それ自体は病的なものではない場合も多い。かつては,子宮収縮を認めた妊婦に対して対症療法である子宮収縮抑制薬を早期から投与し,妊娠中期または後半期に子宮頸管長の短縮を認めた時点で入院管理していた。早産に関連する子宮収縮という現象についての病態仮説は,感染を含む炎症が子宮内に存在することで子宮収縮が増強し,それを周期的または持続的に認めることによって胎児および胎児附属物を娩出しようとする反応(いわゆる陣痛)と考えられる。対症療法によってこの現象を抑制はできないことを考慮すると,娩出される児を管理する準備をしておく必要がある。子宮内の病態を改善できる治療が困難な現状では,切迫早産と診断したら正期産期まで妊娠継続することよりも,出生後の未熟児の管理および合併症予防の観点で対応することが重要である。
理論は理解していても,新生児科を含めた周産期チーム内で管理指針に関するコンセンサスが得られず悩む医療者や妊婦も多いと考えられる。本稿では,切迫早産のこれまでの管理,病態仮説,臨床的なエビデンスに基づいた診断基準の提案,および運用方法の実際について解説し,治療法の見直しを提案する。
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