産婦人科医療--明日への展開 診断基準--新しい局面
Ⅱ.産科篇
切迫早産
瓦林 達比古
1
Tatsuhiko Kawarabayashi
1
1佐賀医科大学産婦人科
pp.701-704
発行日 1983年10月10日
Published Date 1983/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206879
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早産を管理する時に,まず問題になるのは未熟児の出生であり,この出生後の未熟児の管理が裏を返せば臨床的に早産問題を修飾し,複雑にしているといえよう。胎児にとって正常の子宮内環境以上の環境を人工的に作ることが困難である以上,産科医は胎児にとり最良の環境であると考えられる子宮内においてできるだけ胎児が発育できるように努力し,その環境を維持しなければならない。しかしながら,その努力にもかかわらず子宮内環境が悪化していった時,準備された胎外環境の質によりその移行の時期が左右されることになる。今日のように未熟児医療が発達してくると,地域によるその質の差も著しく,実際臨床上産科医の早産への取り組み方も自ずと異なってこよう。
このような社会的背景の中で早産を考える時,未熟児分娩との関係で妊娠35週未満のわが国の早産例を集計すると,全分娩の3-4%(厚生省心障研究班周産期管理班,1980)に発生しているといわれる。この中には母体の腎疾患,心疾患,糖尿病,妊娠中毒症,前置胎盤などによる胎児あるいは母体の危険性のための人工早産が含まれていて,これらの症例については1例1例の原因に対する治療により子宮内環境を整えることが母児にとって,まず重要になってくる。次に,胎児発育は正常であるが子宮収縮が早期に発来して,それが直接原因となって起こる早産がある。これが切迫早産を論ずる時の主な対象であろう。また,この人工早産と陣痛の早期発来の両方に関係が深いものとして前期破水の問題があるが,これについては次章に譲ることにして,ここでは子宮収縮の早期発来の問題点について,切迫早産という観点から論じてみたい。
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