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血液生化学検査の多くはいわゆるルーチン検査であり,サブスペシャリティー分野を問わず扱う検査項目である.しかしながら成人と異なり,小児の臨床検査値は,年齢によって体格,各臓器の発達段階が異なることや,成育環境など多くの要素の影響を受ける.また疾患の影響などで,必ずしも発達や発育が年齢とは一致していない場合も多く,総合的な判断を要する.しかし,まずは常に年齢基準値を意識して判断することが重要である.さらに新しい項目では年齢基準値がはっきりしていないこともあり,さらに注意が必要となる.一般に成人では基準範囲(基準値)は健常と考えられる集団についての測定値分布の95%信頼区間で表すとされている.しかし小児では採血量や採血行為そのものの負担,採血手技の影響などが問題になることがある1).小児でも基準値策定が試みられ,1996年には日本公衆衛生協会によって作成されたこともあったが2),現在では同様の方法を用いることは難しく,代用手段として患者データを利用して基準範囲を推定する方法がしばしば用いられる.基準範囲と区別して臨床参考範囲(clinical reference ranges:CRR)と定義されている3)4).患者データを用いる場合でも,異常値の出にくい診療科での検討や,全患者データの自動分類から特定の異常パターンを除外するなどの方法が用いられる3).小児の一般的な年齢区分に合わせて,検体検査では新生児(1か月未満),乳児(1か月~1歳未満),幼児(小学校入学まで1~6歳),学童(小学生6~12歳),青年期(中学生以降,思春期を含む)に分けていることが多い5).しかしながらこのような年齢ごとの基準値あるいはCRRが細かく記載されている施設は少なく,その傾向を大まかに把握することが実臨床では重要である.本稿ではルーチン検査として行われる血液生化学検査を中心にポイントを概説する.
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