症例
複雑心奇形術後に閉塞性黄疸が顕在化しAlagille症候群の診断に至った1例
徳富 謙太郎
1,2
,
高瀬 隆太
1
,
鍵山 慶之
1
,
寺町 陽三
1
,
籠手田 雄介
1
,
家村 素史
2
,
渡邊 順子
1
,
須田 憲治
1
,
山下 裕史朗
1
1久留米大学病院小児科
2聖マリア病院小児科
キーワード:
Alagille症候群
,
複雑心奇形
,
ECMO
,
カテーテル治療
Keyword:
Alagille症候群
,
複雑心奇形
,
ECMO
,
カテーテル治療
pp.794-798
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000002225
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Alagille症候群(Alagille syndrome:AGS)は1975年にAlagilleらにより報告された多系統の器官に影響を及ぼす常染色体顕性(優性)遺伝の遺伝性管内胆汁うっ滞症であり,新生児期から乳児期早期に閉塞性黄疸を契機として診断される症例が多い.近年,AGSはNotchシグナル伝達経路の異常が原因であることが明らかとなり,大多数の症例は,JAG1変異または欠失によるハプロ不全であることが知られている.ごく一部はNOTCH2の突然変異が原因であり,それぞれAGS1型および2型とよばれている.主要徴候は,① 肝内胆管減少症による慢性肝内胆汁うっ滞,② 末梢性肺動脈狭窄などの心血管の異常,③ 特徴的な顔貌(くぼんだ眼,広く突出した前額部,小さく尖った顎,筋の通った鼻),④ 眼科的異常(後部胎生環など),⑤ 椎骨の異常(蝶形椎体など)の5徴候である.以前は,肝病理組織での小葉間胆管減少が確認され,これら5つの徴候をすべて認める場合を完全型,少なくとも3項目を認める場合を不完全型と分類するとされてきたが,近年は症状の乏しい不完全浸透例や非典型例も報告されており,その疾患概念は拡大し「病理所見での胆管減少に加え2項目以上の肝外症状を認める場合,またはJAG1,NOCTH2の変異をもってAGSと診断する」という考え方が主流となりつつある1).今回,肺動脈閉鎖を伴う心室中隔欠損の姑息的右室流出路修復術(palliative Rastelli術)後に高度閉塞性黄疸と腎障害をきたし,遺伝子検査によりJAG1の異常を認めAGSの診断に至った1例を経験したので報告する.
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