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ここ数年,日常診療において情報通信技術(ICT)はなくてはならない存在となっている.学生も研修医も指導医も皆がインターネット端末を持って病院内を闊歩し,ことあるごとにスマートフォンで調べている状況はもう決して珍しい光景ではない.また,以前は開業や過疎地域の診療所勤務などによりソロプラクティスになるとどうしても最新の知識から遅れ,一昔前の診療を続けている医療者を見かけることも少なくなかったが,最近ではインターネットを上手に使いこなすことで都会で開催される勉強会などに出席できなくとも,そこで得られるものに勝るとも劣らない情報を得ることができる.実際に医療者がもつべきと期待される知識は年々膨大になっており,スーパーコンピュータのように記憶力に非常に優れた人でもない限り,すべてを知り尽くすことはほぼ不可能となっている.基本的知識は当然必要であるという前提で,現代において医療者がもつべきは医学的知識そのものだけではなく,「知識を確認する方法,もしくは知識を得る方法,知識を活用する方法に関する知識」であるといってもよいだろう.その手段としてこれまでの書籍だけではなく,ICTが用いられるべきである.日常診療だけではなく,教育においても同様でICTを活用しない手はない.このあたりは将来的にはAI(人工知能)とのかかわりも出てくる可能性が高いだろうが,そもそも医療者教育における臨床現場での教育と日常診療はほぼ同時並行的に進められるものであり,日常診療に必要なICTは当然,医療者の臨床教育にも必要である.本稿では実際には教育におけるICTの活用について大きく分けて2つの観点から考えてみたい.いずれも教育の質を上げるためのものであるが,1つは教育システムの質という観点から,もう1つは臨床実践教育の質という観点からである.では,実際にどのように活用していくべきなのだろうか,どのようなものを利用していくべきなのだろうか.ここではICTにおける臨床教育に活用できそうなものを例示していく(図1).
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