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現病歴:第1病日左膝裏部の痛みを訴えた.痛みは自制範囲内で歩行可能なため,自宅で様子をみていた.第3病日38度台の発熱があり,立位では左臀部痛を訴えた.近医を受診し血液検査を施行,CRP 1.2mg/dL,WBC 17,600/μLと軽度の炎症反応の上昇を認め,筋肉痛と判断されアセトアミノフェンの使用を指示された.第4病日37度,第5病日36台に解熱するも左側膝裏部痛と左側臀部痛が続き,歩行困難となり当院を受診した.身長128.0cm(+1.5SD),体重27.1kg(+0.9SD),心拍数68/分,血圧115/69,体温36.6度,呼吸数24/分,口腔内や心肺腹部に異常はなく,アトピー性皮膚炎を示す所見,刺し口を含めた皮膚所見は認めなかった.左足に体重をかけることはできなかった.左側股・膝関節の可動域に制限はなく,左股関節はわずかに屈曲,外旋,外転位をとり,他動的に動かすことで痛みが憎悪,左膝関節を過伸展すると膝裏の痛みが憎悪した.左下肢の筋力は徒手筋力テスト(MMT)3-4程度だった.採血検査では軽度の炎症反応の上昇を認めた,免疫能は異常を認めていない(表).心臓超音波検査では疣贅形成を含めて異常を認めなかった.左足単純X線写真で異常はなく,頭から膝部造影CT検査では腹水はわずかで,左閉鎖筋のわずかな腫大,ごく一部に淡い高吸収域を認めた.膝部MRI検査で左大腿骨骨幹端部にT2強調像で高信号を,骨盤部MRI検査ではT2強調像で左座骨ならびに左閉鎖筋に高信号域を認め,同部位の炎症が示唆された(図1,2).骨盤内の炎症部位へのアプローチは解剖学的に困難であり,左大腿骨骨生検を施行,悪性所見はなく非特異的な炎症像のみだった.生検時には腸骨骨髄検査も行い悪性所見のないことを確認している.化膿性の筋炎・骨髄炎であった場合,最も頻度が高い起炎菌は黄色ブドウ球菌であるため,セファゾリンを2週間投与したところ,症状の改善を認め退院とした.抗菌薬の使用・適応・使用期間に関しては時間をかけて家族と話し合って決定した.退院時には松葉杖歩行だったが,退院後1か月程度で運動も含めた生活は発症前と同様に可能になった.発症半年後の骨盤・大腿部MRI検査では左大腿部・左閉鎖筋のT2強調像での高信号は消失していたが,左座骨の高信号は残存した(図3).1年後の再検査で座骨高信号の消失を確認している.
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