整形外科医のためのパーキンソン病診療ガイド

Clinical practice guide for Parkinson’s disease for orthopaedic surgeons

要旨：超高齢社会のわが国において，65歳以上のパーキンソン病（PD）有病率は100人に1人に達する。「歩行障害」や「痛み」といった訴えで整形外科を受診することや，あるいは整形外科疾患にPDを合併していることも多いため，PDの症状に気づき，適切な周術期管理を行う必要がある。PDの特徴として，無動・寡動，筋強剛，振戦といった基本の運動障害に加えて，歩行時の左右非対称な腕振りの減少，外的キューによるすくみ足の改善，臥位での姿勢異常の改善などが挙げられる。周術期管理では，抗PD薬の急激な中止を避け，特にMAO-B阻害薬とオピオイドの相互作用に注意が必要である。術後に発熱，顕著な筋強剛，発汗・頻脈症状や，不随意運動（ジスキネジア）の増悪を呈することがあり，脳神経内科との連携が欠かせない。PDを適切に理解し，各専門領域に限らず包括的アプローチを行うことで，患者の運動機能と生活の質（QOL）向上に大きく貢献できる。