多発性硬化症と視神経脊髄炎スペクトラム障害

Multiple sclerosis and neuromyelitis optica spectrum disorder

要旨：多発性硬化症（MS），視神経脊髄炎スペクトラム障害（NMOSD）は脊髄炎をきたす代表的な神経疾患である。中枢神経系に時間的・空間的に炎症性病変が多発する点で両者は同様だが，その疾患病態は全く異なる。MSは中枢神経内のいずれの部位にも急性脱髄病変をきたすが，髄腔内で慢性的に継起する炎症による神経障害が長期的な機能障害に影響している。NMOSDは抗アクアポリン4（AQP4）抗体によりアストロサイトが補体介在性に破壊され，重篤な神経障害を呈し，特に脊髄MRIで確認される長大な脊髄病変を特徴とする。急性期炎症の障害度が高く，できる限り発症早期に急性期治療を導入することが望ましい。またミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質（MOG）に対する自己抗体陽性例でもNMOSD様の脊髄長大病変をきたすことがある。NMOSDに比較して治療反応性は良好であるが，膀胱直腸障害が残存しやすい。