変形性股関節症の疫学

Epidemiology of hip osteoarthritis

要旨：変形性股関節症（股関節OA）は，疼痛や歩行障害の原因となり，著しく高齢者の日常生活動作（ADL），生活の質（QOL）の低下をもたらすことから要介護予防の観点からも重要な疾患である。しかし，地域住民を対象とした大規模な調査はほとんど行われていないのが現状である。筆者らはこれまでに運動器疾患をターゲットとした大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability（ROAD）スタディの追跡調査の結果から，股関節OAの有病率，発生率，増悪率，10年間における有病率の推移を推定した。また股関節OAの危険因子とされる寛骨臼形成不全や股関節痛との関連についても解析を行い，股関節OA発生や増悪との関連を検討した。今後も追跡調査を継続し，股関節OAの疫学指標や危険因子，防御因子を解明することにより，股関節OAの発生予防と高齢者のADL，QOLの維持増進に貢献したい。