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特集 整形外科における静脈血栓塞栓症対策update
静脈血栓塞栓症の予防と最近の動向
Current concepts of the prophylaxis for venous thromboembolism in orthopaedic surgery
手塚 太郎
1
,
稲葉 裕
1
Taro TEZUKA
1
1横浜市立大学医学部,整形外科学教室
キーワード:
Venous thromboembolism
,
Mechanical prophylaxis
,
Chemoprophylaxis
Keyword:
Venous thromboembolism
,
Mechanical prophylaxis
,
Chemoprophylaxis
pp.839-844
発行日 2021年6月1日
Published Date 2021/6/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000001776
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要旨:深部静脈血栓症(DVT)は筋膜より深部の静脈に血栓が生じる病態であり,発生機序として古くから提唱されているのがVirchowの3徴(血流の停滞,凝固亢進状態,血管内皮損傷)である。肺塞栓症(PE)は肺の機能血管が何らかの塞栓子により閉塞する病態であり,特に塞栓子が血栓である場合に肺血栓塞栓症(PTE)と称される。DVTが遊離してPTEを発症するという考えに基づき,両者を併せて静脈血栓塞栓症(VTE)と呼んでいる。整形外科周術期の患者に行われる積極的下肢運動や早期離床,弾性ストッキング着用や下肢の間欠的空気圧迫法などの理学的予防法は主に血流の停滞に,抗凝固薬による薬物予防法は凝固亢進状態にそれぞれアプローチする予防法であり,それら2種類の予防法を組み合わせることで予防効果の向上が期待される。股関節骨折手術や下肢人工関節置換術などはVTEの発生リスクが高い手術であり,これらの手術後の患者において,薬物予防法の有用性が示されている。しかし,抗凝固薬の投与には出血のリスクがあり,患者によってはそのデメリットが予防のメリットを上回る場合もある。症例ごとにVTE発症リスクと出血リスクのバランスを検討し,理学的予防法または薬物予防法のいずれか,もしくは両者を選択する必要がある。
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