疾患と検査値の推移
静脈血栓塞栓症
山本 剛
1
1日本医科大学付属病院集中治療室
pp.657-661
発行日 2007年7月1日
Published Date 2007/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543101768
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概説
近年,肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症は静脈血栓塞栓症として包括された.肺血栓塞栓症の主たる原因が深部静脈血栓症であること,深部静脈血栓症の半数に無症候性の肺血栓塞栓症が合併していること,以上がその理由である1).静脈血栓塞栓症の発症要因は三つ,すなわち血液凝固能の亢進,血流の停滞,静脈壁の異常(Virchowの三徴)に分けられる(表1).血液凝固能亢進の原因としては,プロテインC欠乏症やプロテインS欠乏症などの先天性血栓性素因,抗リン脂質抗体症候群などの後天的血栓性素因,さらに悪性腫瘍が挙げられる.血流停滞の原因には,エコノミークラス症候群や長期臥床などが含まれ,静脈壁異常の代表的な原因は外傷,手術,カテーテル留置などである2).
静脈血栓塞栓症では一般的に大量の血栓が存在するため,凝固系および線溶系指標が異常値を示す.臨床の場ではこれらの指標が診断や薬効評価に利用される.例えば,Dダイマーは安定化フィブリンの分解産物であり二次線溶を反映するため,Dダイマーの増加は血栓の存在を示す.しかし,静脈血栓塞栓症以外の血栓性疾患でも増加するため特異的な指標ではない.この背景を利用し,静脈血栓塞栓症が疑われる患者においてDダイマーが増加していなければ静脈血栓塞栓症ではない,といった除外診断法として汎用されている3).
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