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特集 超音波による骨折治療
低出力超音波パルス療法の基礎
-—LIPUS照射が骨折治癒の過程で細胞に及ぼす多様な効果の細胞生物学的考察—
Fundamentals of low-intensity pulsed ultrasound therapy;cell biology of diverse effects of LIPUS on the cells engaged in fracture repair
高垣 裕子
1
Yuko MIKUNI-TAKAGAKI
1
1神奈川歯科大学大学院,口腔科学講座硬組織分子細胞生物学
キーワード:
Low-intensity pulsed ultrasound(LIPUS)
,
Cyclooxygenase-2(COX-2)
,
Inflammation
Keyword:
Low-intensity pulsed ultrasound(LIPUS)
,
Cyclooxygenase-2(COX-2)
,
Inflammation
pp.9-15
発行日 2021年1月1日
Published Date 2021/1/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000001585
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要旨:低出力超音波パルス(LIPUS)の有効性が報告されたのが1983年,その10年ほど後にExogen装置が米国食品医薬品局の承認を得てからはや4半世紀になる。その間に明らかになったLIPUSの作用機序は大まかに記すと次のようになる。① 低出力超音波パルスの波動がナノモーションを引き起こすことにより,代替の物理的刺激が骨折部の細胞に到達する。② 細胞膜表面で細胞外基質タンパクと結合したα5β1などのインテグリンの受容体がナノモーションを感受し,歪みが細胞内側で生化学的シグナルに変換され,細胞内伝達経路に入る。③ 主にリン酸化の授受の連続によるシグナル伝達の結果,誘導体型酵素シクロオキシゲナーゼ(COX-2)が発現され,骨形成に重要な役割を担う生理活性物質PGE2が産生される。④ PGE2が多様な経路で骨代謝を活性化することにより,骨折が治癒する。その他の経絡を含めてLIPUSに対する細胞レベルの応答はかなり解明された感もあるが,骨代謝における免疫系の関与の研究が近年急速に進み,骨折治癒の理解も深まった。それに伴い,LIPUSの作用機序で理解すべき全身性の効果が浮かび上がってきたともいえるが,実は1990年前後に注目された骨折治癒の全身性効果と深く関わっている。LIPUS照射により “contralateral” の骨折の治癒が促進された症例など検討の余地があり,免疫系の応答を含めた複雑な生体反応を視野に,まだまだLIPUS治療の汎用性を広げられるのではないだろうか。
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