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苦行を修行と思えば,道,自ずから開ける
斎藤 充
1
Mitsuru SAITO
1
1東京慈恵会医科大学,整形外科学講座
pp.1-1
発行日 2021年1月1日
Published Date 2021/1/1
DOI https://doi.org/10.18888/se.0000001582
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これは地獄の中学・高校6年間のサッカー人生で,鬼監督が幾度となく我々部員に言って聞かせた言葉である。当時は,その言葉の意味も理解する間もなく,365日中,地獄のキーパー練習に耐えていた。くる日もくる日も同じ練習の繰り返しに曜日の感覚もなくなっていた。苦行でしかなかった。中学3年の7月,東京都大会の決勝の日,前半0−1でハーフタイムを迎えた。東京都の代表になれず,このまま高校へ行って,また地獄の日々かと暗くなった。とその時,監督がこう言った。「お前ら3−2で勝つから安心して後半行け」。いつもの修羅の顔はなく,悟りを開いた高僧のように見えた。試合終了の笛が鳴った。3−2で優勝した。監督の言ったとおりになった。15年間の人生で感じたことのない達成感を覚えた。「おめえら,いい顔してる」。その時の監督の笑顔は忘れない。
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