書評
道は開ける,他
pp.53-56
発行日 1951年3月10日
Published Date 1951/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200056
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「道は開ける」は直譯すれば,「如何にして,煩悶を解決し,新しい生活を始めるかということで,著者カーネギーが7年間の彼の體驗考えをまとめたものである。勿論體驗や考えをまとめるには,なにかその基準となる方向に照らして,まとめるわけであるが,カーネギーはこれを人間の煩悶というものにむけたのである。原著者の序文として彼はかういうことをかいている。
即ち,―如何にして又何故に本書は書かれたか―今から35年前,私はニユーヨークにおける最も憐れな青年の1人であつた。學校を出たばかりの私の職業は,貨物自動車を賣ることであつたが,私は自分の職業がいやであつた。私のいた下町の安下宿屋は油虫で一ぱいだつた。私の心は煩悶と反抗と失望とに充ち滿ちていた。學生時代の夢はすべて悪夢だつた。そして彼はその輕蔑する職業を斷然捨てる決心をして,YMCAの夜學校の教師となつた。そして生徒に教え,いろいろな人に交つている中に,彼は世間の人々が澤山の智識は身につけてゐても,煩悶に對しては殆ど何にもしらない。無力であることを知つた。
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