アミノ酸と運動器の健康

Essential amino acid supplementation for locomotive syndrome prevention

要旨：運動器の健康を維持するためには，一定の筋量の維持は不可欠である。高齢になると様々な要因によって筋タンパク質の量は徐々に減少する。つまり，筋タンパク質の分解量が合成量を上回るか，合成速度が低下するかによって筋量は減少していく。しかし，高齢者でも，必須アミノ酸の補充は筋タンパク質の合成を促進する効果があり，なかでもロイシン高配合の必須アミノ酸の補充がより効果的であるとの指摘が多い。これまでの先行研究を総合すると，必須アミノ酸補充は筋量の上昇効果についてはおおむね一致しているが，筋力の向上効果については必ずしも一致せず，研究者によって異なる結果を報告している。しかし，運動にアミノ酸補充を加えることによって，筋量の上昇のみならず，筋力の向上や歩行機能の改善効果を多くの研究で検出している。よって，運動器の健康を維持するための戦略としては，運動単独あるいはアミノ酸補充単独よりも，運動とアミノ酸補充の組み合わせがより効果的であるとの根拠を示した。