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乳癌の疾患概念はその治療成績の解析とともに変遷してきた。1890年代に,乳癌の進展は乳房原発巣からリンパ節を経由して全身に順序立てて広がっていくというハルステッド理論が提唱され,その後約一世紀の間手術は拡大切除を目指し,放射線治療は手術よりも広い範囲を補完する局所療法として行われた。しかし,生存率は改善せず全身療法が導入されるようになると,Fisherらによる全身病モデルが提唱されるようになった。早期から全身に微小転移は存在するというこの概念のもと,化学療法や内分泌療法の併用により生存率が向上することが示されると全身療法を重要視し,放射線治療の重みづけが下がった時期がみられた。しかし,1997年にデンマークとカナダから2つのランダム化比較試験(RCT)の結果が報告され,高リスク群に対する化学療法併用の胸壁および領域リンパ節に対する乳房全切除術後放射線療法(postmastectomy radiation therapy:PMRT)は局所再発率を減少するだけでなく,生存率も向上させることが示された。これには放射線治療技術の進歩による晩期有害事象の低減が寄与していると考えられている。これらの報告を受けて,現在乳癌の疾患概念はハルステッド理論と全身病モデルが混在するスペクトラム理論が支持されるようになっている。今後は,放射線治療の有用性は常に手術や全身療法とのバランスを加味し,評価されるべきである。本稿では,近年の乳房切除術あるいは乳房温存術後の領域リンパ節に対する放射線治療について,2018年に改訂された日本乳癌学会の乳癌診療ガイドラインの知見を取り入れて考察する。
For postmastectomy breast cancer patients with axillary lymph node metastasis, it was reported that postmastectomy radiation therapy improved locoregional control rate and reduces breast cancer death. On the other hand, it was also reported that there was no significant difference in survival rate with or without PMRT in breast cancer patients with 1 to 3 axillary lymph node metastasis, because systemic therapy had advanced. Therefore, in the modern treatment era, the usefulness of radiotherapy should always be evaluated taking into consideration the balance with surgery and systemic therapy. In this article, radiation therapy for regional lymph nodes after mastectomy or breast-conserving surgery in recent years will be considered incorporating the findings of breast cancer clinical practice guidelines published by the Japan Breast Cancer Society that was revised in 2018.
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