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近年,増加しつつある食道胃接合部癌の至適リンパ節郭清範囲がいくつかの後ろ向き・前向き研究で明らかとなってきた。日本胃癌学会と日本食道学会では,cT2-T4の食道胃接合部癌を対象として前向き研究を行い,リンパ節転移頻度を検討した。その結果,食道浸潤長により縦隔リンパ節の転移頻度が異なり,4 cmを超えると上・中縦隔リンパ節への転移も高率となり,2.1~4.0 cmでは下縦隔リンパ節〔No.110(胸部下部食道傍)〕への転移は高率であるが,上・中縦隔は低率であること,2 cm以下では縦隔リンパ節転移は低率であることが明らかとなった1)。胃癌治療ガイドライン第6版には,この結果に基づく手術アプローチとリンパ節郭清のアルゴリズムが提唱されている2)。これによれば,4 cmを超える食道浸潤を伴う食道胃接合部癌では,No.110(胸部下部食道傍)に加え,No.106recR(右反回神経),No.107(気管分岐部),No.108(胸部中部食道傍),No.109(主気管支下),No.111(横隔上),No.112(後縦隔)の郭清が推奨されており,食道切除長をあわせると,胸腔アプローチによる食道切除を行うのがバランスが良い3)。一方,食道浸潤長2.1~4.0 cmの食道胃接合部癌で郭清すべき縦隔リンパ節は理論上No.110のみであるが,No.110とNo.111,No.112,これに加えてNo.20(食道裂孔部)との境界を術中に明確に同定するのは困難である。したがって,No.110を確実に郭清するために,当院では下縦隔リンパ節としてNo.111,No.112,No.20とともにen blocな郭清を行っている。また郭清の上縁に関しても,No.108とNo.110の境界は術中には同定できず,No.112もMtLtにまたがっている。下縦隔リンパ節郭清において下肺静脈下縁は術中ランドマークの1つであるが,同部はMtに位置している。実臨床では,下肺静脈下縁までを郭清の上縁として郭清すれば,No.110とNo.111,一部のNo.108,一部のNo.112が郭清され,下縦隔は十分に郭清されたこととなる。当院では,上・中縦隔にリンパ節転移のない食道胃接合部癌(食道浸潤長3.0~4.0 cmまで)に対しては原則,経裂孔アプローチでの噴門側胃切除,観音開き法再建を行っている。en blocな下縦隔リンパ節郭清を行うことで,再建操作の際に必要十分な下縦隔のスペースを確保できることにも期待している。

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