連載 誌上ディベート TAPP法におけるヘルニア門の処理
第1回:腹腔鏡下鼠径部ヘルニア修復術
蛭川 浩史
1
,
早川 哲史
2
1立川メディカルセンター立川総合病院外科
2名豊病院病院長/腹腔鏡ヘルニアセンター
pp.1089-1089
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000003942
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ヘルニア門より3〜4cm頭側で腹膜を切開する手技を高位切開と定義する。本手技は高位からMPOを一望できるため,広く良好な視野が得られ,解剖学的な所見に則った合理的な手術操作ができる利点がある。また,内鼠径輪より高位での切開を行うため,スライディング型ヘルニアや,ヘルニア門やその周囲の癒着,肥満による消化管のせり出しなど,内鼠径輪へのアプローチが困難な場合でも手術操作は可能である。内鼠径輪環状切開で問題となる腹側の腹膜の垂れ下がりはない。一方で,L3型やヘルニア嚢が陰嚢に至る大きなヘルニアでは,ヘルニア嚢内部が気嚢され腹膜前腔の視野の展開が難しくなる場合がある。また,ヘルニア嚢の処理はヘルニア嚢に沿った剥離操作が必要であり習熟を要する。安全確実なTAPPを行うためには,症例に応じた適切なアプローチ方法の選択が重要で,高位腹膜切開によるTAPPは習得すべき手技と考えられる。
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