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膵は後腹膜に位置し,周囲に形成されている種々の癒合筋膜(十二指腸筋膜,膵後筋膜,膵前筋膜,結腸間膜より構成される)により主要な血管系の前面に固定されている。したがって,浸潤性膵管癌(以下,膵癌)をはじめとする膵頭部領域腫瘍が結腸,結腸間膜,腎,副腎,胃などの膵周囲他臓器に直接浸潤することはまれではない。とくに診断時には進行癌が大多数を占める膵癌では,肝転移,腹膜播種,広範リンパ節転移がなく上腸間膜動脈(superior mesenteric artery;SMA)に浸潤がなければ,膵周囲臓器への浸潤を伴う膵癌に対しても,膵周囲の他臓器合併切除を行うことによって根治性が得られることがある。腫瘍の主座と進展方向,周囲他臓器とその支配血管への浸潤状況によって合併切除される主要血管系や他臓器が決定されることになる。膵癌取扱い規約第7版では,膵局所進展度(T因子)を規定する局所進展度因子として他臓器への浸潤(OO)について他臓器とは副腎,胃,大腸,脾臓,腎静脈,下大静脈,大動脈などと規定されている1)。とくに膵頭部癌が鉤状突起から下方へ進展し門脈(portal vein;PV)・上腸間膜静脈(superior mesenteric vein;SMV)のみならず結腸間膜にも浸潤している場合,PV/SMV合併切除ならびに結腸・結腸間膜の合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術が必要となることも少なくない。また,SMAから右肝動脈が分岐するrRHA(replaced right artery)が存在する膵頭部領域癌の場合,その解剖学的位置関係からrRHAへの浸潤を受けやすい。このような症例においてもR0切除が可能であればrRHAの切除・再建が勧められる。本稿では他臓器合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術のうち,比較的行う頻度が高い「PV / SMVならびに結腸・結腸間膜の合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術(⇒手術手技①)」と「rRHAの合併切除を伴う膵頭十二指腸切除術(⇒手術手技②)」について,その手術手技の要点を述べる。
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