手術症例報告
正中弓状靱帯による腹腔動脈起始部狭窄─11症例の臨床経験
峠 弘治
1
,
坂田 純
1
,
廣瀬 雄己
1
,
三浦 宏平
1
,
滝沢 一泰
1
,
若井 俊文
1
1新潟大学大学院医歯学総合研究科消化器・一般外科学分野
キーワード:
腹腔動脈起始部狭窄
,
正中弓状靱帯
,
膵頭十二指腸切除術
Keyword:
腹腔動脈起始部狭窄
,
正中弓状靱帯
,
膵頭十二指腸切除術
pp.839-845
発行日 2020年4月15日
Published Date 2020/4/15
DOI https://doi.org/10.18888/op.0000001696
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腹腔動脈起始部狭窄は,正中弓状靱帯(median arcuate ligament;MAL)や神経叢による圧迫,悪性腫瘍の浸潤,動脈硬化,血管炎などが原因となって形成されるが1),それらのなかでもMALによる圧迫が最多とされている2)。MALによる腹腔動脈起始部狭窄は腹痛の原因となり,その臨症例は1963年にHarjola3)により初めて報告された。現在,食後の腹痛発作に代表される腹腔動脈起始部の外因性圧迫による慢性狭窄に起因した症状を呈する病態は,腹腔動脈起始部圧迫症候群(celiac axis compression syndrome;CACS)として知られており,症状改善のためにMAL切離が実施されることが多い4)。また,MALによる腹腔動脈起始部狭窄は,血行力学的ストレスから膵十二指腸動脈瘤を形成して後腹膜出血・血腫で発症し得る点5,6)や,膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy;PD)の際に腹腔動脈還流領域への血流確保が必要となる点2,7,8)で,臨床上問題となっている。
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