掌蹠の角化と爪変形に対してアプレミラストで加療された前立腺癌によるBazex症候群の1例

Palmoplantar hyperkeratosis and nail deformities in Bazex syndrome associated with prostate cancer treated with apremilast

69歳，男性。2021年頃より爪甲の白濁と掌蹠の角化が出現し，前医で皮膚生検を受けたが確定診断されなかった。当院初診時，全手指・足趾の爪甲に粗糙化と，掌蹠に著しい角化を認めた。Bazex症候群を疑うも明らかな腫瘍は指摘できず，twenty-nail dystrophyや爪乾癬を考え外用加療したが改善しなかった。アプレミラストの投与を開始したところ，半年後にはわずかに爪症状を残し皮膚所見はほぼ消失した。再度悪性腫瘍の精査を行ったところ前立腺癌の診断となり，手術後に皮膚症状は著明に改善し，Bazex症候群の関与が強く示唆された。前立腺癌によるBazex症候群の報告は調べ得る限り本邦で6例のみであり，アプレミラスト投与で改善した報告は国内外で自験例が初であった。