左乳頭に生じた基底細胞癌の1例

Basal cell carcinoma on the left nipple

52歳，女性。7年前より左乳頭に黒色斑が生じ，数カ月前よりびらんと出血があった。初診時左乳頭外側に10×10×12mm大の黒褐色で弾性軟の結節があり，ダーモスコピーではlarge blue-gray ovoid nests, arborizing vessels, ulcerationがみられた。超音波検査では境界明瞭で血流豊富な低エコー領域を呈した。結節から3mmの側方マージンをとり結節直下は乳管を数mm含む深さで切除し，乳頭の一部を温存し単純縫縮した。病理組織像では表皮と連続して基底細胞様細胞が増殖し境界明瞭な結節を形成し，一部に篩状や腺様構造を示した。病変基部には表皮と連続性に基底細胞様細胞が索状に増殖する部分もみられた。腫瘤は境界明瞭で乳管への明らかな浸潤はなかった。基底細胞癌が乳頭部に生じることは極めてまれである。