憧鉄雑感
第124回 コロナ禍の帯状疱疹
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.1447-1447
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003452
- 有料閲覧
- 文献概要
“帯状疱疹が増えているとのことですが,これはやはりコロナ禍のストレスが原因でしょうか?” マスコミの取材である。鉄道ならまだしも,皮膚科学のコメントなんぞ他に名医がゴマンとおり,何も好き好んで筆者でなくてもいい。しかし,恥を忍んでノコノコとマスコミに登場すると案外お馴染患者が喜ぶのでよせばいいのに引き受けることが多い。ちなみに我がクリニックで1年間の帯状疱疹患者数をコロナ前後で比較すると6%増であった。著者のような無精者には電子カルテは誠に有り難く瞬時に斯様な統計が出る。“何と! 6%増! めちゃくちゃ増えているじゃないですか!” 記者は盆と正月が一度に来たような喜び方であるが,医学的には激増とは思えぬ。“やはりストレスが原因ですね?” 当然筆者は否む。“そう考えられますね?” “遺憾に思います” と筆者,政治家の如く煙に巻く答弁である。“可能性はありますね” “まあ否定はできません” と筆者。すると記者は飛び上がらんばかりに喜び “なるほど! 家に閉じ籠り,他人との交流がないコロナ禍のストレスが,帯状疱疹を激増させ世間を震撼させる! いや,素晴らしい!” なんぞと一人悦に入り,まるで即興詩人の如く瞬く間にシナリオを書いた。
Copyright © 2022, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.