憧鉄雑感
第123回 電子メール考
安部 正敏
1
Masatoshi ABE
1
1医療法人社団 廣仁会 札幌皮膚科クリニック
pp.1293-1293
発行日 2022年6月1日
Published Date 2022/6/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000003397
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受付職員は当惑した表情である。何でも筆者への講演依頼の電話がかかっており,診療中と断っても海外からの依頼として取り次いでくれの一点張りであるという。“ギブミーチョコレート!とでも繰り返せば根負けしてすぐに切るよ” とアドバイスすると相手は流暢な日本語であるという。職員も本業の事務作業で忙しいため遂に筆者が電話に出た。果たして,インターネット上で講演をしてほしいという。内容はあろうことか筆者におまかせで何でもよく,10分で10万円の報酬という。筆者の駄話に左様な価値がないのは火を見るよりも明らかでありいかにも怪しい。ちなみにどこから電話しているのか問うと “トンガ” という。トンガ王国を経由する国際電話詐欺が横行していることなど筆者はお見通しであり,これはますます怪しい。“鉄道の話でもいいか?” と問うと是非お願いしたいなどという。絶対に怪しい。医師のメールアドレスが闇サイトで売買されているのは周知の事実である。“今後の連絡のため,先生のメールアドレスと携帯電話の番号をお知らせください”。筆者も斯様な赤子の手をひねるが如き詐欺に引っかかるほど御目出度い人間ではなく,即撥ねつけた。しかし,敵もさるもの “報酬のやり取りに必要である” などとぬかす。そこで,郵送を求めると,“トンガでは郵便がない” など支離滅裂である。流石に憤慨し,“とにかく郵送して下さい!” と電話を切った。
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