巻頭言
かゆみ地獄
稲福 和宏
1
Kazuhiro INAFUKU
1
1国保直営総合病院 君津中央病院皮膚科,部長
pp.1989-1990
発行日 2021年12月1日
Published Date 2021/12/1
DOI https://doi.org/10.18888/hi.0000002986
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「患者さんの痒みを取ってやらんかったら,わしら皮膚科医はかゆみ地獄に落ちるばい」26年前に母校の皮膚科に入局して間もない頃に恩師から聞いた台詞である。地獄とは仏教では六道の一つで,輪廻転生の世界観から期限があるとされる。日本の地獄絵には仏が描かれており,そこに魂の救済という一面が垣間見える。キリスト教では仏教とは異なり,地獄は永遠で天国の対極にある。日本の地獄はキリスト教における浄化によって天国に至れる煉獄に近いのだという1)。地獄とはあらゆる苦しみからの救済を希求する人間の本質を表しているとも理解できる。この世は無常で,日々修行の身である。これから先,私はすべての患者をかゆみ地獄から救えるであろうか。
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