癌患者の手記—私は前を向いて歩く たとえ声は奪われても・3
地獄へ舞い戻る
吉見 之男
pp.346-348
発行日 1985年3月1日
Published Date 1985/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661921040
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放射線治療
やっと退院はしたものの,再開した放射線照射の影響もあり,通院もなかなか大変.放射線は週5回,診察は1回だが,結局土・日を除き毎日通院の状態.これなら入院していた方が楽である.
口中の渇き,たまるつば,必需品のティッシュをポケットに電車での通院途中,乗り換え駅で口をゆすぎ喉をうるおしながら,片道2時間往復4時間で家へ帰るとグッタリ.夜も熱が出,汗もかき,食欲もない毎日が続く.食べる物の味が見た感じとは違い,うまそうだなと目では思っても,実際は喉を通らない.舌は舌の役割をせず,ただ単に甘いか辛いかぐらいしか分からない.
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