連載 ほん
青春地獄めぐり
長沢 岬
pp.56
発行日 1973年2月1日
Published Date 1973/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611204478
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とかくひとは自分の「青春」を語りたがる。オトナの世界に首までつかり,世間様は神様です,とばかり唯々諾々と人生を受け入れ始めると,深い溝を隔てて薄明の彼方にある過去を「青春」という名で呼びたがる。
「青春」の神々の庇護のしたで,輝しさと幸福感といささか眩量にも似た空虚さ—暑い夏の1日のように一種特別な光彩を放っている「青春」。そのとき自分はどれほど純粋な傷つきかたをしただろうか,どれほどひたむきに愛しただろうか,……云々,というわけである。
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