綜説
サイトメガロウイルスによる眼内炎症の最近の知見
八幡 信代
1
1九州大学眼病態イメージング講座
キーワード:
サイトメガロウイルス
,
サイトメガロウイルス網膜炎
,
サイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎
,
慢性網膜壊死
Keyword:
サイトメガロウイルス
,
サイトメガロウイルス網膜炎
,
サイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎
,
慢性網膜壊死
pp.1387-1394
発行日 2025年12月5日
Published Date 2025/12/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004479
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サイトメガロウイルスは,ヘルペスウイルス科に属するDNAウイルスであり,全世界の成人の50~90%に潜伏感染している1)2)。従来は免疫能が未熟な胎児や新生児に起こる先天・新生児感染症のほか,後天性免疫不全症候群(AIDS)や,悪性血液疾患に対する造血幹細胞移植や化学療法後など人工的な高度免疫能低下状態においてのみ,ウイルス血症,サイトメガロウイルス網膜炎などの問題を起こすと考えられていた1)。しかし近年の眼内液網羅的PCR(polymerase chain reaction)検査の普及により,明らかな高度免疫能低下のない宿主に多様な眼内炎症を引き起こすことが明らかになっている3-5)。特に,虹彩炎や角膜内皮炎,高眼圧を主徴とするサイトメガロウイルス前部ぶどう膜炎は本邦をはじめとする東アジア地域での発症が多い6)7)。サイトメガロウイルス網膜炎は従来AIDS患者がほとんどであったが,内科治療の進歩に伴い本邦では悪性血液疾患治療中の発症が増加しており,これらの症例は治療に難渋することが少なくない8)。また,サイトメガロウイルス慢性網膜壊死は,自己免疫疾患に対する免疫抑制治療中など,中等度免疫抑制状態の患者にみられることが多く,広範な網膜血管閉塞を特徴とし,血管新生緑内障の予防治療が重要である5)。サイトメガロウイルス関連眼疾患はいずれも重篤な視力障害に至るものが多いことから,疑わしい症例は速やかに眼内液PCR検査を行い,治療を開始することが重要である。本稿では,サイトメガロウイルスによる多様な眼内炎症の概要を最近の知見を含めて解説する。

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