症例報告
全身性エリテマトーデス加療中にサイトメガロウイルスによる慢性網膜壊死を発症した網膜色素変性の1例
野田 啓司
1
,
浅野 真美加
1
,
近藤 寛之
1
1産業医科大学眼科学教室
キーワード:
サイトメガロウイルス網膜炎
,
慢性網膜壊死
,
ミコフェノール酸モフェチル
Keyword:
サイトメガロウイルス網膜炎
,
慢性網膜壊死
,
ミコフェノール酸モフェチル
pp.255-260
発行日 2025年3月5日
Published Date 2025/3/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004089
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サイトメガロウイルス(CMV)網膜炎は免疫機能低下例に併発しやすい疾患である。今回我々は,全身性エリテマトーデス(SLE)加療中にCMV慢性網膜壊死を併発した網膜色素変性(RP)の症例を報告する。患者は38歳女性,13歳時にSLEを発症し,33歳時より免疫抑制剤であるミコフェノール酸モフェチル(MMF)を内服していた。RPの既往があり,視野狭窄のため症状が乏しく,定期受診時に右眼のぶどう膜炎を指摘され紹介となった。初診時,右眼の高眼圧,両眼の豚脂様角膜後面沈着物,前房中炎症細胞,硝子体混濁がみられた。右眼は眼底透見困難で,左眼は網膜周辺部に白色滲出斑を認めた。トリアムシノロンTenon嚢下注射,点眼加療を行うも改善は乏しかった。右眼の前房水ウイルスpolymerase chain reaction (PCR)検査で,CMV DNAが陽性であり,ガンシクロビルの全身療法を行い,炎症所見の改善が得られた。RP症例では視野狭窄や視力低下のために自覚症状が乏しいため,ぶどう膜炎の発見が遅れる可能性があり,免疫抑制剤を使用している場合はCMV慢性網膜壊死を生じる可能性を念頭に置いて経過をみる必要がある。

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